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コラム

天然檜で作られた木桶とスツール、受け継がれていく想い (後編)

2022年2月24日

BAINCOUTUREがこれまで培ってきたバスルーム提案の経験を元に、新たに展開を始めようとする「Maison de Baincouture」。
後編ではその製作現場を見学させていただこうと思います。

<2023年8月21日 追記>

オンラインショップ「Maison de Baincouture」がオープンしました。
お風呂時間を仕立てる様々な商品を取り扱っています。
下記リンクからご覧ください。

前回に引き続き、株式会社桶数の伊藤 匠さんにお話を伺います。
今回は特別に木桶の作業工程を見学させていただきました。
他ではなかなか見ることができない職人の手仕事の様子をご覧ください。

①せんがけ

まずは木材をちょうど良い大きさに切り分けた後、材料の表面がギザギザしているのでそれを整える作業から入ります。
これが「せんがけ」という一番最初に行われる作業です。
これは次の「かんながけ」がしやすくなるようにするための作業です。
このままだと木材は微妙にねじれてしまっているので「かんながけ」する時の弊害になります。
「かんながけ」の前に木材の繊維を断つ「せんがけ」をすることで、後々起こるトラブルを減らすことができます。
詳しくは次の項目をご覧ください。

②かんながけ

「かんながけ」は一般的にかんなの刃を2枚組み合わせて木の形を整えます。
そうすることで木の表面に境目ができにくくなりますが、
先程の「せんがけ」の工程を踏むことで伊藤さんは1枚刃でも逆目が起きにくくしています。
本番の削りは組み立てた後になるので、ここでの「かんながけ」は最低限の削りになります。
専用の型に合わせて丸みを作れるよう高低差や隙間など計算して作ります。
また、側板と側板が接する面を正直(しょうじき)と言い、この正直には正直かんなで削ります。
この正直かんなは荒削りようと仕上げ用に使い分け、ここでは荒削りします。

伊藤さん:職人は音で作業の状態がわかります。
弟子が傍で作業をしていて、職人が別のことをしていたとしても、音でなんとなくその作業の様子がわかるんです。
例えば鈍い音がして違和感を感じ、弟子の様子を見たら間違ったことをしているのがわかることもあります。
弟子はうまくやった気でも、職人は肌で感じる違和感があるんですね。

③組み上げ

整えられたバラバラの木材を組み上げていきます。

長さを揃えるための「まわし竹」が桶の口径の目標になっているので、バラバラの木材を並べて一気に締め上げます。

こうした組み合げ作業の中で、これまでに1枚でも妥協したものがあったとしたら組み上げがうまくいかない原因になります。

伊藤さん:桶1つで木材を10枚〜20枚使うため、1枚でもミクロ単位で隙間を作ってしまえば、組み立てた時には数ミリの隙間になってしまいます。妥協して痛い目を見るのは自分自身なんです。
また、組み立てる時の木の枚数や幅などはその都度変わります。

木を床に並べてそれぞれのバランスを見ながら検討していきます。この時、木はできるだけ幅がバラバラな方がいいんです。広いものの隣に幅が狭いものが来ると、後々の歪みにくさに差が生じます。
こうして1枚1枚「まわし竹」に合わせて並べます。
ちなみに、今回の木桶は斜めにカットされているような形状をしています。

シンプルなものなら上端を合わせるだけでいいのですが、今回はカット状の形に合わせるため、下端に合わせて並べて組み立てます。ここが意外と難しいんです。
体験でいろんな人にしてもらったりしますが、これがなぜか多くの人はできないんですよ、途中で並べたものがバラバラになってしまう。うまく円にすることができないんですね。

④タガ入れ・削りあげ

丸い形に組み上げた後は本番のタガを入れて、円になった状態で削りあげていきます。
触った時に波打っていると、そこから水が漏れ出すので、しっかりとかんなで削りあげます。

⑤底板をはめる

底板をはめるときは振動を逃さないような専用の台でしっかりと叩いてはめます。
この時音が『ポンポン』から『カンカン』まで変わります。

⑥小口を切る・木殺し

あとは木口(こぐち)を斜めにカットします。
この時木桶の表面を濡らします。濡らすことで、木はふやけて削りやすくなるためです。
実は桶は内側に向かって斜めに切り込まれています。これにより水捌けがよくなり、使いやすい木桶になります。
また最後に「木殺し」と呼ばれる作業が行われます。
この作業により木口が黒くなりにくくなり、保ちが長くなります。
やりがんなで整えたあと、最後に細かい傷を落として、完成となります。

伊藤さん:底板は、最初は手で押し込めないほど硬いんです。
ですが、ピッタリのものを作ると後々木桶の底がゆるんでしまう原因になってしまうんです。
なので、やや硬めの状態で「木殺し」と呼ばれる技を使います。

これはあらかじめ木を凹ませる技で、ハンマーの重みだけで落とせるようにします。
木殺しは繊維を殺さず凹ませているので、水を含ませることで一気に木が膨張し、突っ張った状態で底が抜けなくなります。
これによりぴったりと隙間なく底板がはまるため、木桶として使われる時水が漏れないようになるんです。


以上が、木桶の実際の製作の様子でした。
このように桶数さんでは江戸時代から続く技法により、本格的な木桶が作られています。
使いやすく、檜特有の清々しい香り、そして現代の生活にも馴染むモダンなデザイン。
その商品は伊藤さんの妥協のない技によって作られていました。
桶数の桶は国内外共に高い評価を受けています。
今回のバンクチュールから販売する木桶とスツールも五感からバスルームで楽しんで使っていただける、美しい商品となりました。

この木桶とスツールは東京、名古屋、大阪のショールームにて先行販売されております。
是非、お立ち寄りの際は手にとってご覧ください。


 株式会社Tree to Green
▼ご協力
株式会社桶数
伊藤 匠 さま
Mail: okekazu.110@gmail.com
http://okekazu.jp/
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