COLUMN

コラム

天然檜で作られた木桶とスツール、受け継がれていく想い (前編)

BAINCOUTUREは『バスルームを「使う空間」から「過ごす空間」へ』をコンセプトにオーダーメイドシステムバスを製造しています。
その一環として、新たにバスルームで過ごす時間をより楽しく、豊かなものにするためのお風呂で使える商品を販売する予定です。
今回はその販売予定の商品の一つと、制作裏をご紹介したいと思います。

<2023/8/21 追記>

オンラインショップ「Maison de Baincouture」がオープンしました。
お風呂時間を仕立てる様々な商品を取り扱っています。
下記リンクからご覧ください。

■Maison de Baincouture

Maison de Baincouture(メゾン ド バンクチュール)。
BAINCOUTUREはこれまでシステムバスを中心とした新しいライフスタイルを提案してまいりました。
そんなバスルームのプロフェッショナルであるスタッフたちが、約30年という販売実績から培われてきた経験と知識よりセレクトした、
ワンランク上の上質なアイテムを集めました。
Maison de Baincoutureは五感から楽しみ、リラックスして過ごしていただける、より豊かな入浴体験ができるような商品をご提案いたします。

こちらのMaison de Baincoutureの商品はECサイトでの販売を予定しておりますが、
先行してバンクチュールの全国のショールームにて販売しております(東京・大阪・名古屋)。
現在バンクチュールのショールームは完全予約制ですので、事前に下記予約フォームよりお申し込みください。

今回はMaison de Baincoutureのラインナップの中から、木材の中でも最高級品である木曽檜で作られた木桶とスツールをご紹介いたします。
この木桶とスツールは木曽生活研究所(株式会社Tree to Green)とコラボして実現した特注仕様の商品です。
BAINCOUTUREのバスルームで過ごしやすいようサイズやディテールを追求して作っていただきました。

日本の伝統技術から生み出される最高級の素材で作られたこの2つの商品を、制作から関わっていただいたお二人にお話を伺いました。
コラムでは前後編でお届けします。

前編は木曽生活研究所 小坂 正海さま。
後編は職人の株式会社桶数 伊藤 匠さまのインタビューをご紹介します。

■BAINCOUTUREの天然檜で作られた、特別な木桶とスツール

木桶

縁が斜めに傾斜した外見が特徴の、バンクチュール特注の木桶です。木曽の天然木である木曽檜で出来ています。
この木桶は普通の湯桶に比べ少し小ぶりな直径に仕上がっており、フチに傾斜をつけることで持ちやすい形状となっています。
それにより掬うお湯の量も調整しやすいため、手の大きさや性別を問わず、使いやすい商品となっています。

・スツール

ベテランの職人が江戸時代から続く桶づくりの技術で、一つひとつカンナや刃物を使って手作りで仕上げたスツールです。
伊勢神宮の「御杣始祭」(※1)の際に執り行われる「三紐伐り」(※2)という伐採方法をモチーフにした形状となっています。
今回はお風呂だけでなく様々なシーンでお使いいただけるようサイズを2種類ラインナップいたしました。
一般的なスツールの高さであるH360のものと、BAINCOUTUREのバスルームで使用することを想定して
桶を置くカウンターの高さに合わせたH300という少し低めのサイズです。
お好きな場所で、木曽檜の香りを楽しみながらお使いいただくことができる商品となっております。

※1 御杣始祭
伊勢神宮の御神木の伐採に伴って開催される御奉祝行事です。
※2 三紐伐り
伊勢神宮のご遷宮の際に使う木曽ヒノキを伐採する時に用いる伐採方法です。

木桶を締めるために外側にはめる輪状の「タガ」は一般的には竹などで出来ておりますが、今回の商品は金属の「洋白タガ」で作られております。
またどちらの商品もBAINCOUTUREのロゴが焼印されており、高級感を感じられる仕立てとなりました。

これらの商品を取り扱う木曽生活研究所は、日本の“木”を使ったものづくりから、よりよい環境や文化をつくろうと活動されています。
プロジェクトを担当していただいた木曽生活研究所の小坂さんにBAINCOUTUREの営業である田中が実際に現地に訪問し、
今回のコラボの想いをお聞きしました。

■木のぬくもりを感じていただきたい

田中:今回はスツールと桶のコラボ企画で制作をお願いしている木曽生活研究所の小坂さんにインタビューをさせていただきます。

小坂さん:よろしくお願いします。

田中:木曽生活研究所さんは木曽檜を活かした木製品を製造されているブランドで、さまざまなオリジナリティ溢れたデザインの製品を展開されていらっしゃいます。今回は我々バンクチュールからお声がけさせていただいて実現したコラボ企画でしたが、小坂さんはこのお話を聞いた時、バンクチュールに対してどんな印象を抱いていたのでしょうか?

小坂さん:ホームページの施工事例を見て、どれも高級感溢れるとても美しい空間だと感じました。このバスルームで過ごすお客さまはとても幸せに感じるんだろうなと思います。
そして、その中に檜の商品を置かせていただけたら、より良い空間になるんじゃないかと思いました。

田中:ありがとうございます。では、今回のコラボについて驚いたこと、おもしろいと感じたことありますか?

小坂さん:バスルームを作るプロの方々の意見を聞いた時おもしろいなと思いました。
たとえば、スツールの台は弊社では一般的なサイズのものしか作っていなかったのですが、お風呂での使い方の観点から「もう少し小さいものもあっていいんじゃないか」というご意見をいただき、今回弊社のオリジナルよりも小さいサイズの商品ができました。我々にはない意見でしたので勉強にもなりました。

田中:小坂さんから見て、今回の木桶やスツールの魅力とはなんでしょうか?

小坂さん:私は木の空間にいると、とてもあたたかい気持ちになります。木の香りだったり木目の美しさに温かみを感じるんです。でも、お風呂を全て木材で作ることはデザイン面やメンテナンス面、金額面でも難しいことだと思います。
だけど、今回のスツールと木桶をバスルームに置いていただけるとその温かみをお風呂の中で感じていただけますよね。お風呂で手軽に木の温かみを感じていただけるのが、この商品の一番の魅力だと思います。
また、スツールはお風呂以外の空間でも使っていただけるデザインです。例えば洗面所やリビングなどでも使用できる商品なので、さまざまな部屋で木の温かみを感じていただければと思います。

田中:木の温かみって確かにありますよね。
少し話が変わりますが、我々バンクチュールは3RやSDGsの視点から、資源の再活用に注目しております。木はそういった点についても優れた素材ですよね。

小坂さん:はい、その通りです。持続可能な社会として「木を切ったところにまた木を植えて……」というサイクルが出来やすいので、大きな企業でも森に力を入れているところも多いですね。
例えば今回の商品には使われていないのですが、木曽檜研究所では一般的に廃材になってしまうヤニの多い節を商品に活用しています。ヤニは粘着質で木工機材を壊す原因にもなってしまいますが、檜の中で一番匂いが強い部分でもあります。そのため木曽生活研究所では檜は生きているからこそ、この香りが出るとたくさんの人に知っていただきたく、節を利用した商品の展開など行なっております。

■「木は生き物なんだ」と思って

田中:環境に優しく、そして独特の手触りや香り、温かみが楽しめるのが檜の魅力なんですね。
それでは、バスルームで檜という素材を使う魅力ってなんでしょうか。

小坂さん:檜特有のあの爽快な香りだったり、また木曽檜だからこその目の詰まった耐久性と木目の美しさがあるので、その特性はお風呂でも楽しんでいただけると思います。
また、コーディネートという点においても、昔のようにお風呂空間の中で全てを檜にすることは難しいですし、また和の空間になりすぎてしまうと現在の生活スタイルに合わせにくいですよね。適材適所でさまざまな木以外の材も使いながら、檜をワンポイントとして使って空間を美しく見せることができるのではないかと思います。そういった点で、今回の檜の木桶とスツールがお風呂のアクセントになればと思います。

田中:やはり木製品は水回りで使うと汚れなどを気になる方がいるのではと思いますが、その対策などはありますか?

小坂さん:メンテナンスは木製品全般に言えるんですけれど、とても重要なことになります。我々の取り扱う木製品は手をかければ長く使えるものです。しかし逆も言えて、放置しておくと早く壊れてしまう原因になります。しっかりとメンテナンスをしてあげることが重要です。
例えば使用後に水分を拭いていただいたり、また使用した後は風通しのよいところで乾かしていただくとカビの予防にもなります。しかし乾燥した場所に長時間置いてしまうと割れの原因にもなりますので、そういうところに放置をしない……ということが挙げられます。
ここだけ聞くと取り扱いが面倒だと感じられるかもしれません。
しかし、現代の人たちの多くが理解されていないと思いますが、木は『生き物』です。製品になったとしても呼吸は続けて生き続けているものです。なので「木は生き物なんだ」と思って扱っていただくことが大切です。

田中:木は環境によって全然扱いが変わる素材ですもんね。生きているものと同じように丁寧に使っていただくことが、長く使うために重要なんですね。
では、桶とスツールをお客様にどんなふうに使っていただきたいですか?

小坂さん:一番は木のぬくもりを感じていただければと思います。また、さっきの答えと重複しますが長く使える商品ですので経年変化を楽しんでいいただき、愛着を深めていただければ嬉しいですね。

田中:そうですね、確かに長く使うと木は他の素材とは異なる独特な表情の変化もありますね。木の表情の変化をお客様には楽しんでいただきたいです。
また、デザインという面では木桶には裏面、スツールには側面に入れてくださったバンクチュールのロゴも目を引く仕上がりになっていますよね。今回の商品作成のためにオリジナルの焼印を作っていただき、ありがとうございます。おかげでバンクチュールオリジナルの商品であることが一目でわかる商品になりました。

■今後のコラボ展開は……?

田中:最後になりますが、もし今後も継続して我々バンクチュールとコラボすることがありましたら、どういったことに挑戦してみたいですか?

小坂さん:木曽檜をメインにしたバスルームなんかをやってみたいですね。
でも檜で空間を全て構成すると物足りないと思いますので、バンクチュールさんの得意な陶器(タイル)や石をうまく組み合わせてバスルームを作れると素敵な仕上がりになるんじゃないか思います。
また「檜のお風呂を自宅に取り入れたい」と思うと、メンテナンス的にも金額的にも厳しいところがありますので、簡単に檜のお風呂を体験できるようなサブスクなんかをやっていけたら面白いですよね。

田中:私も今回コラボをさせていただいて、非常に将来性を感じました。もっともっと、違うコラボができればと感じております。
まだ形としては見えてないんですけれど、木曽檜を使った新しいオリジナルの浴槽を御社と開発したりできないかと思いました。
他にも、木という素材の魅力を使って、バスルームの周辺部位、隣接する場所に木製品、またグリーンを使った空間の提案も新しい試みとしてできればいいなと思っております。
まだまだ形にはなっていませんが、ぜひ挑戦していきたいですね。

……色々とご質問に答えてくださって、ありがとうございました!


木曽檜は古くから人々の生活と共にあり、どれほど生活が変化しても変わらず人々を魅了する素材です。
時が経っても色褪せない、生きているからこそ私たちの五感に訴える香りや手触りを、この木桶とスツールから感じることができます。

次回は実際に職人さんが木桶とスツールを作る工房の現場に伺いたいと思います。
3代続く木桶職人一家、株式会社桶数の伊藤 匠さんによる高度な伝統技術とその想いをお届けしますので、引き続きお楽しみください。


 株式会社Tree to Green
▼ご協力
株式会社Tree to Green
小瀬木 隆典 さま
小坂 正海 さま
TEL: 03-6447-4770
Mail: info@treetogreen.com
https://treetogreen.com

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▼インタビュアー
田中秀幸
ニッコー株式会社 バンクチュール事業部 大阪営業所 営業所長

Photo and text by Tsuido Taichi

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